プロローグ

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 一面真っ白などこか異国の宮殿を思わせる造りの建物に、一人の男が駆け込んだ。身に纏っているものは褐色の布だけという、古代ギリシア人のような出で立ちの男は、背中に小さな白い翼が生えていた。  相当急いでいるのか男は大声で叫びながら走り、建物の門を勢いよく開け放って即座に膝をついた。  「ついに見つけました! 偵察兵から先ほど、つい先ほど発見報告がありました。いかがなさいますか?」   男は頭を下げたまま床に向かって叫ぶ。当然床に報告しているわけではない。目の前には一際大きな体の男がいた。大きいのは体だけでなく背中に生えた翼も同様だった。  膝をつき頭を下げる男に対し、腕を組んでふんぞり返っているところから、男より位が高いことが分かる。   「そうか、よく見つけた。偵察兵に伝えろ。今日のところは見失わないようにして待機。連れ帰るのは明日だ」   「はっ!」   男はさらに深く頭を下げる。額が床に押し付けられていた。  上官と見られる男が目の前からいなくなるのを確認すると、男はそそくさとその場を後にした。    広い部屋にパチンと乾いた音が響いた。すると侍女が三人がかりで大きな椅子を運び、男の真後ろに音を立てずに置いた。このことからもこの男の位の高さが伺える。  侍女は男が座るのを確認し、グラスに赤いワインのようなものを注いで手渡す。男は無言でそれを受け取り、ゆっくりと顔の前でまわして香りを楽しんだ後、そっとグラスに口をつけた。   「ふふふふ、ふはははははは! ヤツが消えて十三年、実に長かった。しかしこれで、これで世界は我々のものだ。ふはははははははは!」   一面真っ白な、どこか異国の宮殿を思わせる造りの建物に、一人の男の高笑いが響いた。
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