この歌声を君に。

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―好きだ… その言葉はもう要らない。 僕が必要としている言葉は"愛してる" ただそれだけだ。 どんなに君が僕を嫌いになっても 愛してると僕が思っていればそれだけで充分。 幸せなんだ。 だから君がうんざりする程囁いてあげよう 愛してる― 「…うん!おっけーだ。お疲れ様」 終わった。俺はヘッドホンをとり、ため息をつく。 「いやー良かったよ!お前も慣れてきたな!」 「…ありがとうございます」 「それでまたお前に歌って欲しいそうだ」 そう言ってマネージャーから一枚の紙が渡された。 紙には文字がいっぱい書いてある。一見すると詩のようだ 「お前の歌声を一役かってくれたんだ。ありがたく思えよ?」 「はい。…ありがとうございます」 「じゃあまた明日な」 「はい。お疲れ様でした。」 マネージャーが去った後、もらった紙をもう一度じっくりとみる。 まただ… また、"愛してる"って言葉が入ってる。 …分からない。 愛してるの意味が… それも分からずに歌い続けるなんて馬鹿らしいな。ほんと 俺は一応、人気アイドルとしてそこそこ名をあげている。 なんでも俺が歌った悲恋の曲が共感できると話題を呼び、今じゃ悲恋の曲を中心に活躍中だ。 だけど俺は自分の歌に疑問を抱いていた ―そう…愛してるが分からないのだ。 俺は愛してるなんて思ったこともないし多分一生思わない なのになんで俺の歌う歌達は愛してるを思えるのか それが疑問だった。 俺は嘘をつき続けている。 愛してるという嘘の言葉をリズムに乗せて――
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