アフタースクール

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ふーっ。 パソコンを立ち上げて、『アフターサークル』と記載されたアイコンをクリックする。 毎日している行動なので、パソコンが立ち上がってからアフターサークルのログイン画面までの動きを、体がインプットしていた。 生徒番号とパスワードを入力し、マイページへと移る。『生徒へのお知らせ』に通知が入っていたので、すかさずマウスをスライドさせた。 『明日予定しておりました体育祭の全体練習は、雨天の可能性があるため延期となりました。詳しい情報については明日のホームルームまたは本サービスの【お知らせ】においてご確認下さい。』 一通り目を通してからホーム画面に戻ると、メールボックスから吹き出しが出ていた。すかさずそちらも確認する。送信者は自分にとって唯一の親友とも呼べる隆広だった。 __________________ 8/31 18:36:11 送信者 taka ごめん、明日も学校休むことになりそう。 ほんとごめん。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ どうやら明日も、隆広は学校を欠席するらしい。体の病弱な彼の事だ、責められることではないが、また教室を一人で過ごさなければならなくなると思うと、心の底から溜め息が出た。 時間割りを確認しようとマウスを握った時、階下から母さんの夕飯を告げる声がした。適当に返事をして、パソコンを開いたまま階段を駆け下りた。 アフターサークル──通称「AS」 一万人近くの生徒が通う瀬倉木高校で、今では無くてはならないものとなった放課後ネットワークサービスである。 このサービスでは、学校からの連絡やイベントの予定、明日の時間割など、様々な情報がインターネットを介して生徒らに提供されている。 また、そういった受動的なサービスだけにとどまらず、生徒自身がそれぞれに持っている『アカウント』を使って自発的な活動も行うことができる。 アカウントとは、AS内において、いわば生徒一人一人の分身のようなものだ。 それぞれのアカウントを用いて、生徒自身の活動拠点となる『マイページ』にブログを書いたり、瀬倉木高校独自の動画共有サイトに動画を投稿したりと、その自由度は非常に高い。 生徒同士でチャットやテレビ通話も出来、交流の場としても機能していた。
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