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瀬倉木高校に入ったのは"一番近いから"という単純な理由。
たが他にも理由はあった。
全学年合わせて九千人弱もの生徒が存在する場所で、たくさんの友達を作りたかった。
それに新しく実施された"アフターサークル"というものが何か気になっていたというのもあり、迷わず瀬倉木高校に出願した。
やはり向かっていくよりも先に輪を作って待つ方が友達が出来やすいと踏んで、俺はクラスに朝早々に乗り込んだ。
しかしもう既に大きな人の塊が出来ていた。
「何部入るんだよお前!」
「俺かあ……俺は書道部かな」
「うわ!地味~」
「うるせえ!お前はどうなんだよ」
「茶道部」
「お前の方が地味だろ!」
元気そうな男子たちが騒いでいる。男子は馴染みが早い。それとも同じ中学の奴らだろうか。
あれ、と思った。自分が気圧されている。田舎の中学校では自然と、ごく当たり前のように中心人物になっていたカリスマ性が、逃げるように息を潜めたのだ。
おいおい。どうしたんだよ俺。早く前に……
「お、おはよう」
結局振り絞った俺の声は騒ぎ声に掻き消されてしまった。
俺はきょろきょろと教室を見渡し始めた。騒いでいるグループが視界に入ると、目をそらそうとする。
──俺は、居場所を探しているのか。
こんなにも一瞬で見せつけられるものなのだろうか。井の中の蛙という言葉が、頭の中でゲコッと鳴き声をあげた。
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