アフターハプニング

9/21
前へ
/134ページ
次へ
途端に、描いていた高校生活がはらはらと崩れ落ちた。もうどうでもよくなっていた。どうでもいい、というのは事実この空気の痛さに耐えきれなくなった自分の逃げであると分かっていた。 ここから頑張れば、友達なんて案外簡単に出来るのかもしれない。しかしこの頃までの俺は、今までそういった経験が無かった。小・中学校と、苦労せず自然とリーダーに成り上がっていた俺は、実は一番友達の作り方を知らなかったのかもしれない。 だから「友達が出来ない」という初めての出来事に怖じ気づいたのだ。 そんな時だった。教室にアイツが入ってきたのは。 「おはよう」 中学の時に裏切った俺を、君はもう一度"友達"にしてくれた。 「たか……小岩井」 俺の隣の席に座りながら、彼はそっと笑う。ふわっとした感触は、あの時のままだ。 「隆広でいいよ~。久しぶりだね、また同じクラスになれて嬉しい」 動揺していたのだろうか、座席表を見た時、自分の隣に隆広の名前があったのを見逃していたらしい。 チョコレートが舌の温度で溶けるように、すうーっと心が楽になった。ずっと緊張していたために乾いていた口の中が、今は甘くてほろ苦い。 「俺も……」 嬉しい。と言おうとしていた口が、固まった。甘さに気をとられていた自分の中に、じわじわと苦みが広がる。 「隆広……ごめんな。マジで最低だ俺……」 隆広は「何のこと?」といった表情を見せていたが、やがて一息ついて俺に笑いかけた。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加