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「ずっと一人でこもっていた僕に、たった一時でも夢を見せてくれたのは君だよ。……なんて、ちょっとクサイかなぁハハハ」
照れ笑いを浮かべる隆広。思えばいつも隆広の表情には"笑顔"が混じっていた。
──俺が隆広を裏切ったあの瞬間でさえも。
いいのだろうか。自ら断ち切った繋がりを、もう一度紐で結びつけてもいいのだろうか。
「もし木村君さえ良かったら……もう一度小説の話とか出来る関係になれたらいいなぁ……なんて」
どこまでいいやつなんだ。お前はそんなだから……そんなに優しいから……。
一歩前へ踏み出す。ぐんと隆広との距離が近づいた。つっかえて出かかった謝罪の言葉を飲み込んで、別の言葉に取り替える。
「……ありがとう」
ありがとう。ありがとう。
「やった~!…………あれ、あのクールな木村君が泣いてる~」
「うっ、うるせえ!泣いてねえ!バレたらクラスメイトに俺の第一印象があぁ……」
ありがとう。
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