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「何なんだろうな」
胸の内が苦しい。親友を奪われた弱い自分に腹が立つ。ぼーっとする頭がだんだん覚めてくるにつれ、その思いは増していった。
後悔なんかじゃないけど……むしろ──
憎悪。憎しみに自らの非も何もかも押し付ける。少し体が楽になり、不思議と力が湧いてきた。
窓の外を見据える。知らぬ間に外の景色はもう黒く塗りつぶされていた。
『首謀者は担任』とはっきり表示されたパソコンの画面と、担任である崎本の冷たい強面が浮かぶ。
絶対に復讐してやる。
「木村君……何で笑ってるの?」
陽菜乃が微かに震える声で問うてくる。その目には、小さく怯えが浮かんでいた。
──俺が笑っている?まさか、こんな状況で。
口角を手で上下にいじってみる。うん、異常は無い。すると、陽菜乃が小さく吹き出した。いや、別に変顔したんじゃないからね。
「私の思い違いだったみたい、気にしないで」
少々不満は残ったが、久しぶりに笑顔の陽菜乃を見たので安心した。
さて、と。
乱雑に教科書や参考書が立てられている本棚から、一冊のノートを取り出す。「じゆうちょう」と平仮名で印刷されたこれは、おそらく小学生の時に作文等を出したときにもらえる参加賞か何かだろう。
「……お絵描きでもするの?」
真顔でそんなこと聞くな。
「違ぇーよ、ここに……」
パッとページを一枚めくる。そこには、殴り書きで隆広から送られてきた暗号がメモされていた。
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