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え゛……ひなちゃん。
「お母さん、こんばんは。ご無沙汰してます」
玄関で靴を脱いだ勢いのまま部屋に入ってきた我が母に驚く。いつの間に階段を上がったのか気づかなかった。
「あらやだ、ひなちゃんはいい子ね~。他のお友だちなんかみんな"おばさん"って呼ぶのに、あなたはお母さんって呼んでくれるのねぇ嬉しいわ。でも、なんなら"お姉さん"でも……」
「じゃあ……ご無沙汰してますお姉さん!」
「きゃー!」
「うるさい早く出てってくれ」
陽菜乃と母の話を聞いていると、息が合いすぎて逆にイライラする。俺はぐいぐい迫る母さんを手でしっしと払った。
「あら、邪魔しちゃったかしら~♪陽二郎、くれぐれもひなちゃんに手ぇ出すんじゃないわよ~♪うふふふふふふふふふふふふふふふ」
バタン。陽二郎は強制的にドアを閉めた。
「とんだ邪魔が入ったな。それにしても、何で初見なのにお前の名前知ってるんだ?」
しかも"ひなちゃん"と来た。この発想力はとても自分の親だと思えない。
しかしなかなか陽菜乃の反応が無い。それどころか少しうつむいて頬を火照らせている。
「おーい丹沢~」
「あっ、えっ、何?へ?」
慌てふためく彼女を、少しだけ可愛いと思ってしまった。
「俺の話……聞いてた?」
「えっ、その、木村君のお母さんとは参観日の時にご挨拶してて……楽しいお母さんだね」
ふうん。何だかよく分からないが顔見知りなのか。
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