アフターレフト

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ここからが正念場だ。中に入ってしまえば、後はどうとでもなる……はずだ。 俺は校舎の周りを回って、ちょうど校門と裏口の間までやって来た。自転車でここまで来ているうちに、目は暗さに慣れきっていた。 さあてどこから入ってやろうか…… 窓や二階を、目で伝う。どこか入れる場所は…………ん? よく見るとカーテンが揺れている。誰かいるのかと慌てて身をかがめたが、どうやらどここから風が入ってきているだけらしい。肌に生ぬるい空気が押しかかってくるたび、カーテンがヒラヒラとなびいている。 つまりは、どこか空いているということか。 もう一度よく観察すると、いつも換気するときに開ける窓──俺の目の高さの位置にある窓の一つ上の小さな窓、わずかに開いている隙間があった。 俺にとっては、大きな学校の亀裂だ。 窓の鉄格子に足をかける。高校一年生の平均身長を貫き通している俺だが、少し背伸びをすると簡単に届いた。人がやっと一人通れるくらいの窓のステンレスの格子に手を掛け、思い切り懸垂をする。 汗ばむ手。最近鍛えていなかったが、さすがは育ち盛り。何もしていなくても、運動部に所属していなくても自然と力はついている。顔をしかめながら、なんとか体を学校の内側に通せた。 しかしするりと窓から抜けた俺は、教室にまっ逆さまに落ちていった。 入ることに概念を囚われすぎたため、着地のことを全く考えていなかった。 「あ…………!」 教室の机に向かって、頭から落ちていく。みるみる迫る木製の机。 ぐしゃり。 そんな音がしたような気がした。俺は顔面から、学校の机に顔をぶつけた。
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