アフターレフト

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腰に下げたポーチに手を突っ込む。開いたままだったので心配だったが、そんな心配事をする前に手を動かす。 隆広から送られてきたメールの中に、最も不可解な半角英数字の羅列があった。あんな複雑なもの、パスワードとしか考えられない。 背筋にじっとりと汗をかきながら、必死で探す。早くしないと誰かに見つかるかもしれない。そんな思いが身を切迫して、余計にポーチを探る手を荒らす。 無い………… 懐中電灯で中を照らすが、パスワードがメモされた白い紙切れは見当たらない。窓から落下しながら学校に侵入した。その時に落としてしまったのだろうか。 「……くそっ!」 脳細胞をフル稼働させて、脳神経を隅から隅までたどっていく。どこかに残っていないか、パスワードの記憶が残っていないか。はなからあの数字軍に目を付けなかったのが裏目に出た。最初の一文字がなかなか出てこない。 …………思い出した! 「43…… g……f……」 じわり、じわりと文字が浮かび上がってくる。口ずさみながら丁寧に打ち込んでいく。しかしその時、耳の張り裂けるようなベルの音が廊下を突き抜けて職員室へと入ってきた。 ジリリリリリリリ!! ウォーンウォーン! くっそ、気づかれたか! さすがにパソコンを起動させたのはまずかったかもしれない。ポーチから取り出したUSBメモリを差し込んで、情報を抜き取る準備をする。 5……a78…………u…… 少しずつ、確実に、パスワードが浮かんでくる。ほぼ反射で頭に現れた文字を打ち込んでいった。
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