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中は奇妙な空間だった。
狭い室内の中央に正方形の白い机が一つ。その上には白いノートパソコンが一台。そして対面になるように置かれた、白い丸椅子が二脚。
俺から見て左側の椅子には、瀬倉木高校では見覚えのない男が座っていた。
透き通るような銀色の髪は彼の目元を覆い隠し、不気味さを際立てている。彼の身に付けている白衣のせいもあって、真っ白な室内と同化しているような希薄な存在感。
『どうぞ、この椅子に腰かけなさい』
機械のような薄っぺらい口調が、俺の背筋をなぶった。大きく息を吐きながら男と向かい合わせに座る。
『君は怯えているね。大丈夫、そんなに怖がることはない。少しばかり寒いだけだ』
男の口が細く左右に広がった。楽しんでいる。この男は俺を弄んで楽しんでいるんだ。
『いいかい、まずここでは"ウソ"が通用しない。ボクには全部明け透けに見えているのだから、君の素顔が』
ゾクッと頬が強張った。そう簡単に信じられる話ではないが、この男には十分にそれを信じさせるだけの不気味さと聡明さが備わっていた。
『おっと、自己紹介がまだだったね。ボクの名前はシラ。簡単で覚えやすいでしょ?それじゃあ、始めようか』
人間とは思えないくらいに、シラと名乗る男の口が引きつった。思わず身を硬直させる。
『君には好きな子とかいるのかな』
いきなりの間の抜けた質問に、肩の力が抜けた。思考して、正直に答える。
「いません」
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