狼は死にたがる

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 こいつはもうダメだっていう方に一票だな。  俺はアーシュのベッドから立ち上がった。アーシュの匂いと離れるのは辛いが、もう、何もかもが辛いんだから、一つや二つ辛いことが増えてもどうということはないだろう。  寝室を出て、台所に向かう。 「ここを出たって行くところなんかないだろう」  ひょろひょろエルフが言う。  あるさ。バカにするな。  怒りに指先が震えた。  オレは台所の流しに向かうとそこに立ててあった包丁を取り上げた。その刃先をじっと見つめる。  アーシュの為にこれで何度料理を作ったろう。  じんわりと涙が浮かぶ。アーシュはグルメだった。  腕をまな板に置くと、ザックリザックリと包丁を突き立てる。  天国か地獄かわからないけど、行くところはあるさ。  笑い声を立てながら流れ出す血を眺めた。  エルフが悲鳴をあげたが気にするものか。  リストカットは死ねないんだっけ?  包丁が腕を貫通してまな板に刺さった感触はあったが、それだけで死なないと困るから、包丁を首に当てて一気に引こうとしたら、悲鳴を聞いて飛んできたパトリック先輩に取り押さえられた。  エルフが近づいてきて、回復魔法の詠唱を始める。
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