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やっとしゃべってくれた。
3日目にして。
「出て行きます。学校は辞めます」
というネガティブな発言だったとしても、この狼を愛するわたしには音楽の様に聞こえた。
すっかりやつれ切ったローを見た時は泣いてしまうかと思った。
何を言ってもしゃべらないし、食べ物や飲み物を勧めても見向きもしない。
噂では、あの小犬がローを捨てたショックからこうなったとか。
「辞めてどこに行くんだ?」
わたしが言うのにかぶってパトリックが
「こいつはもうダメだ。」
というのが聞こえる。
わたしは視線をあげてパトリックを睨んだ。
だから来るなと言ったのに。
パトリックはローに厳しすぎる。生まれながらにして騎士であり、陛下にお仕えすることのみを目的に生きてきたこの男に、愛する者を失った痛みなど判る筈がない。
失い続ける痛みも。
この一年、かなわぬ恋に身を焦がし続けた。愛する人には恋人がいて、しかも愛する人こそが恋人を盲目的に熱愛していた。
アーシュと言ったか。
あれは悪魔だ。
素行が悪く、ローの学業の邪魔ばかりしていた。淫乱で怠惰で、学校の規律を破り、何人もの将来陛下にお仕えするべき騎士を堕落させた。
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