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包丁が落ちるのと、パトリックが飛ぶのとどっちが早かっただろう。裸足の足がわたしを飛ばす。
痛みはない。
詠唱の邪魔をしたいだけなのだろう。
背中が壁に当たって止まる。
ローは包丁をつかもうとして膝をついている。出血と痛みが酷くて、意識がなくなりかけているんだろう。
「パトリック!何をしている!!」
わたしは叫んだ。
狼が死んでしまう。
ローが包丁をつかみあげて、喉に突き刺そうとしている。
狼が死んでしまう。
わたしは包丁をつかんだ。ざっくりと掌が切れて血が流れるのを感じる。
わたしの力ではローは止められない。精一杯の力で包丁を下に向ける。
パトリックは何をしている。
「パトリック!」
頭から血を流したパトリックがローの後ろに立ってローの後頭部を手刀で殴る。
ローはそのまま昏倒した。
「まだ間に合う!傷を抑えろ!」
わたしは叫んだ。
「メリー。焼き切れるつもりか?時の魔法を2回なんて無理だ。」
「黙れ!やるんだ!」
狼は元に戻す。
やれる。やってみせる。
詠唱をし始めると、諦めたようにパトリックは傷口を抑えた。
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