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魔法陣が現れ、時を巻き戻し始める。床の血が傷口に吸い寄せられ、傷口が塞がって行く。
と同時に、魔力がどんどん吸われて行く。
もうちょっと、もうちょっとだ。
頭が痛い。
これ以上やると、焼き切れるかもしれない。魔法使いが魔力を自分の器以上につかいすぎると、器は壊れて二度と魔力を貯めることが出来なくなる。器を失った魔法使いは死ぬか発狂する。
「メリー、もうやめろ」
パトリックが言う。
傷は、あと数センチまでの処まで塞がっている。
わたしは渾身の力を振り絞って詠唱を続けた。視界が赤くなり、ここが限界だと詠唱を止めた。
傷は完全に塞がっていた。
「バカな真似をする……」
「黙れ」
意識が無くなりそうだが、無くす訳にはいかない。
「狼の世話はわたしがする。お前は……帰れ」
「何を言っている。導師に相談して指示を仰ごう」
「風紀委員が生徒の説得に来て、自殺されそうになるなんて、醜聞以外の何だと言うんだ。
傷はわたしが治したし、狼が意識を取り戻したらわたしが諭す。
パトリックは狼に厳しすぎる。」
「……俺は逆にお前が狼に甘すぎるように感じるが……」
「黙れ!」
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