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「好きな人が出来たんだ」
アーシュが言う。
小さな身体が大好きだった。
まん丸な黒目がちの大きな瞳。
小さな鼻に大きな口。
茶色くて柔らかい茶色の髪。大きなつんと立った耳も。
我侭で、怒りん坊で、いつも何かに腹を立てていた。
だけど、どんくさい俺の面倒を見てくれた。
何をすればいいか、何処へ行けばいいか教えてくれた。
『ロー!教科書持って!』
『ロー!お茶の準備して!』
可愛い口で言われる度、嬉しくて、喜んで貰おうと必死だった。
とんでもない事をしでかして、故郷に居辛くなった俺をヒトの国の学園に入ろうと誘ってくれたのもアーシュだった。
体術馬鹿で、他に何も出来ない俺なのに。
『学園都市に行って修行すれば、ローなら絶対、王国の騎士団に入れるって!
それで、出世したら、ボクを養ってね?』
そう言われて、一も二もなく頷いた。すごく心細い思いをしていたから、俺は嬉しくて嬉しくて。
学園では特待生になると、手当が出るからと、体術に磨きをかけて、入学の試験では体術の首席で入学した。
『ロー!すごいじゃん!!
首席は一軒家貸与なんだっけ?……ボクそこに住みたいな』
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