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俺はアーシュのベッドで目覚めた。目覚めたということは、生きているということだ。
失敗した。
失望が身体中に広がる。
そもそも、何故パトリック先輩やメリドウェン先輩の前で自殺をしようとしたりしたのか。止められたかったのか。情けない。
パトリック先輩を投げてしまったが、怪我はしなかったろうか。
『アンタほんとヘタレだよね?』
アーシュの声が蘇る。
涙が滲んで視界が歪んだ。
俺は本当にヘタレでダメな人間だ。死ぬことすら上手く出来ない。
何か……匂いがする。
鼻がひくひくと動いた。
甘い、爽やかな匂いがする。きっと花の匂いだ。
どこかで嗅いだことがあるが、思い出せない。
身を起こすと、ベッドの側の灯りがついていた。どういうことだろう、上掛けをかぶった身体の上に銀色の川が流れている。
「ん……」
柔らかい人の声。低い声のトーンで男だと判った。
俺の横に誰かが寄り添っている。
身じろぎすると、川が急に動いた。それは、見事なまでに美しい髪の毛だった。
薄い水色の瞳がぱっと開くと俺を見つめる。
がばっと起き上がって、ベッドの上に正座した。
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