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メリドウェン先輩だ。
「だ、大丈夫か?ロー。腕の具合はどうだ。痛むか?」
俺は怪我した腕を曲げ伸ばししたが、痛みもなく、特に問題ないようだ。
俺があいまいに首を縦に振ると、白い肌に色が差して嬉しくて堪らないという様に微笑む。
「よ、よかった。酷く傷ついていたから、ちゃんと動かなくなったらどうしようかと」
別に動かなくていい。何もかも動かなくてよかった。
心の痛みが蘇って胸を締め付ける。
あのまま、身体中の血を床に吐き出しながら死にたかったのに。
俺の目から涙がこぼれる。
メリドウェン先輩の顔がますます赤くなり、それからやはり銀色の眉を顰めて咳払いをした。
めそめそする俺を快く思っていないのだろう。
後輩が自殺をしようとした上、泣き出したりしたら、それは迷惑だろう。
俺は目をこすった。
見るともなしにメリドウェン先輩を見ると、喉元に飾ってある白い薔薇のピンブローチが目に留まって、匂いの正体が何であるかを思い出した。
この匂いは、薔薇の匂いだ。
アーシュが誰かからもらって来た、赤い薔薇の花束からした匂いだ。
先輩はもう一度咳払いをすると、何かを思い切るように話し始めた。
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