狼は棄てられる

3/5
前へ
/764ページ
次へ
 アーシュにそう言われて、とても嬉しかった。  恋人同士のように暮らせるんじゃないかと舞い上がって。  だけど、指一本触れさせはしてくれなかった。  ……当然だけど。 『ローはボクの番犬だよね。頼りにしてるよ』  あれは、アーシュにつきまとっていた、魔法部の同級生を脅しつけた時だったか。  アーシュから金をまきあげられたとか言うから、締め上げてやった時、アーシュにそう言われて、死ぬかと思うくらい嬉しかった。  そんな風に暮らしていれば、いつか好きになって貰えると思っていたんだ。大事にしていたんだ。 ** ** ** 「先輩、貴族なんだ。 先輩のとこに行けば、ボクは一生ラクして生きられる。 ボクに苦労なんて似合わないでしょ?」  アーシュはそう言いながら、荷物を詰める。オレの手当で買った洋服や魔法道具。  俺はおろおろしながら部屋の中を動き回るアーシュを見ていた。  どうやって引き留めればいいんだろう。  アーシュが杖をかばんに詰め込むのを見た。  アーシュは物凄い才能がある。  俺達狼族は体術馬鹿が多いのに、魔法が使えるんだ。  回復魔法も使えて、オレの傷は一週間くらいで治る。
/764ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3348人が本棚に入れています
本棚に追加