3348人が本棚に入れています
本棚に追加
可愛い声で間違えながら呪文を言う姿はとても可愛くて、最後に杖でぽこんと頭を叩かれたりする。
その姿を見ると術が発動してるかどうかなんて、どうでも良くなってしまう。
だって、俺はオオカミ族で、治りは早いんだし。ヒトの国では格段に強い方なのだから、手を抜いてわざと怪我をしなければ、ほとんど怪我なんかしないんだ。
「あ、相手は男なんだろ?俺だって……いいじゃないか」
荷物を詰めるアーシュの背中に思い切って言ってみる。
「ロー??ありえなーい!」
アーシュは思い切り笑う。
「アンタ貧乏じゃない?
田舎から連れ出してくれたのは感謝してるけど。
今は主席で将来有望なのかもしれないけど、かも、な話でさ、今は何の力もないわけでしょ?
どんくさくて、指示待ちばっかで他人の言いなりじゃね?。
……期待薄だよね」
「愛してるんだ」
差し伸べた手をアーシュは叩き落とす。
「うわ。キモ」
俺は涙を浮かべながら、アーシュの足元に膝をついた。
嫌そうにアーシュが後ろに下がった。
「俺を捨てるのか??
こ、こんなに尽くして来たのに!」
「尽くす。ねえ。
まあ、いい番犬だったけど、もういらないかなあ」
最初のコメントを投稿しよう!