狼は棄てられる

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 可愛い声で間違えながら呪文を言う姿はとても可愛くて、最後に杖でぽこんと頭を叩かれたりする。  その姿を見ると術が発動してるかどうかなんて、どうでも良くなってしまう。  だって、俺はオオカミ族で、治りは早いんだし。ヒトの国では格段に強い方なのだから、手を抜いてわざと怪我をしなければ、ほとんど怪我なんかしないんだ。 「あ、相手は男なんだろ?俺だって……いいじゃないか」  荷物を詰めるアーシュの背中に思い切って言ってみる。 「ロー??ありえなーい!」  アーシュは思い切り笑う。 「アンタ貧乏じゃない?  田舎から連れ出してくれたのは感謝してるけど。  今は主席で将来有望なのかもしれないけど、かも、な話でさ、今は何の力もないわけでしょ?  どんくさくて、指示待ちばっかで他人の言いなりじゃね?。  ……期待薄だよね」 「愛してるんだ」 差し伸べた手をアーシュは叩き落とす。 「うわ。キモ」  俺は涙を浮かべながら、アーシュの足元に膝をついた。  嫌そうにアーシュが後ろに下がった。 「俺を捨てるのか??  こ、こんなに尽くして来たのに!」 「尽くす。ねえ。  まあ、いい番犬だったけど、もういらないかなあ」
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