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「わ、わたしは待てなんて言わない!ローはわたしの愛する人なのだし」
「お互いの気持ちがはっきりしないのに、肉体の関係を結ぶのはよくないことだとは思いませんか?」
ローが首を傾げて、わたしを見る。
「わたしの気持ちははっきりしている」
「俺の気持ちははっきりしていない。でも、煽られれば……欲しくなる」
ローが手を差し出して、ぎゅっと握る。
その手が微かに震えていて、ローは我慢をしているのだと理解した。
でも、わたしはローの側にわたし以外の誰かがいるのは嫌だ。
「絶対行かないから、個室でいいじゃないか!」
激しい口調で言うわたしをローはじっと見ている。
無表情な顔の中で銀の瞳だけが輝く。
情熱を湛えた眼差しに、じわじわと頬が赤くなるのを感じた。ローの瞳の情熱に応えるように押さえようもなく薔薇の匂いが漂う。
「……問題は……」
ローがするりと近づいて、わたしの頬を両手で挟む。
蕩ける銀の瞳が獲物を捕まえた獣の喜悦の微笑みを浮かべた。その野生的は微笑みに心臓が激しく動く。その脈の音も聞こえているのだろうか、ローの指がゆっくりと頬を伝って激しく動く首の脈の場所を探った。
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