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「詠唱しろ!メリー!」
辛うじて一撃を避けたパトリックが叫ぶ。
はっとして、捕縛の呪文を詠唱し始める。ローの周りに魔法陣が展開する。
自分の周りに展開している魔方陣の光を一瞥すると、ゆらっと立ち上がったローが緩やかに片手をあげた。拳を握りしめて、高々と差し上げる。強い濃度の気が放出されて魔法陣が霧散した。
「キャンセルされた!」
「くそっ」
パトリックが悪態をつく。
「ロー!」
ピンとローの耳が立った。何かを探すようにローの頭が揺れる。
一瞬の隙をついて、パトリックが渾身の力で拳をローの顔に叩き込んだ。その激しい勢いに自分も苦痛の声を出してしまう。勢いに後ずさったローは倒れなかった。よろりと一瞬かしいだ身体が倒れることなく真っ直ぐになる。
ぶんと振られた頭がゆっくりとこちらを見た。その目はまだ狂気を宿している。凶暴な笑みがローの顔を歪めた。じりっと下がったパトリックに向かって避けようのない一撃が繰り出される。
わたしの体は勝手に動いていた。殴られたローの身を案じて駆け出した身体を、その攻撃の前に晒す。ローにパトリックを殺させるわけにはいかない。
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