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寸前で攻撃は止まった。
だが、風圧でパトリックに向かって身体が飛ばされる。がつんと大きな音を立てて頭がパトリックの顎に刺さる。
「っい……たーい!」
痛みでぶるぶるっと全身の毛が逆立つ。追い討ちをかけるみたいにパトリックが握ったこぶしで刺さった部分をごつんと叩く。
「痛いはこっちのセリフだ」
後ろから不機嫌そうな声が聞こえる。
ぶつけたとこ叩くとか鬼なの?あ、パトリック鬼だった。鬼!鬼!
荒く乱れた呼吸、苦痛の声が聞こえた。腕をひっぱられて温かいローの腕に抱き寄せられる。動揺しきった手が全身をまさぐる。
「怪我は?」
「頭にパトリックが刺さった」
呻きながら頭を覆うと、ローが手をどけて頭を探った。腫れはじめた部分にローの息が触れて、慰めるようにキスをする。そのまま頬に手が降りて来て、今はもうぎらぎらしていない目がわたしの目を覗き込んだ。恐怖と混乱に満ちた銀色の目から涙が零れる。
「あなたを殺すところだった」
掠れ切った声で囁くと、ローが鼻をわたしの鼻にこすりつけてくる。これは確かオオカミ族の親愛を示す行動だ。くすぐったくて笑みが零れる。
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