沈殿

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かといって、手にしたランジェリーを手離す訳でもなく。 ――ほ、保険よ、保険。 そう自分に言い聞かせる。 いつもよりも時間はたっぷりある。 丁寧に髪をブローして、 気のせいかいつもよりも少しだけ、化粧もキチンとした。 鏡にうつった自分と目が合う。 やっぱり、どう考えても、蓮見とは不釣り合いだ。 そんな、迷いに迷っている間に時間は過ぎて。 何時もの時間。 地下鉄に乗って、会社の最寄り駅から地上に上がる。 毎朝の日課。 スタバでカフェラテを買って、会社までの道のりをゆっくりと歩く。 ドキドキする鼓動は、今夜の蓮見との食事なのか。 ――植原と。 話をキチンとして現実を受け入れる胸の苦しさなのか。 どちらかもわからなかった。
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