沈殿

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店の前でタクシーを降りると、道路脇で蓮見の姿が目にはいった 「耀子さん」 嬉しそうにそう名前を口にして近づいてくる蓮見に 「ちょっと。それ、やめて」 開口一番。可愛くない言葉が出てくる。 「タクシーで来たんですか? なら一緒に来れば良かった。僕が出しますよ」 そう言って私の嫌味をムシして財布を取り出す蓮見に 「いい、いいわよ、そのくらい」 焦って声がまたうわずった 「ダメです」 仮にもアンタより年上で稼いでるっていうのに 「わかった、わかったから。じゃあ今度、今度ね」 「今度?」 ニヤリ、と蓮見の顔が悪戯に歪む。 あどけない笑顔に、クラクラした ――しまった 「じゃあ、今度」 ああ、心臓がもたない
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