3068人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
気持ちは沈んでいるはずなのに、頭に浮かぶのは蓮見の事ばかり。
正直、免疫がないから、時間が立てばたつほど、夢でも見ていたのかと思ってしまう
一層、夢なら。
蓮見に口説かれた事よりも、異動の方がこたえていて、丸ごと夢ならいいのに、とこの期に及んでまでも、仕事の事ばかりで往生際が悪い。
それにしても。
蓮見は一体、何を考えているのだろうか。
浮かれて飛び上がるような歳でもないし、ましてやそんな思考を最初から持ち合わせていない。
口説かれ慣れているならいいけれど、生憎(あいにく)そんな経験、ここ数年全くない。
いくら考えてみても、蓮見に気に入られる要素が自分に見当たらない
気難しくて、年上で。
会社からは不要と打診された、落ち目のデザイナー。
化粧は薄化粧だし、トレンドを追い回しているせいで、見た目に女を意識した姿からは程遠い。
何も私でなくても、蓮見なら他にいくらでも女がいるだろうに。
わざわざこんなオバ……
――いや、やめておこう。
最初のコメントを投稿しよう!