沈殿

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気持ちは沈んでいるはずなのに、頭に浮かぶのは蓮見の事ばかり。 正直、免疫がないから、時間が立てばたつほど、夢でも見ていたのかと思ってしまう 一層、夢なら。 蓮見に口説かれた事よりも、異動の方がこたえていて、丸ごと夢ならいいのに、とこの期に及んでまでも、仕事の事ばかりで往生際が悪い。 それにしても。 蓮見は一体、何を考えているのだろうか。 浮かれて飛び上がるような歳でもないし、ましてやそんな思考を最初から持ち合わせていない。 口説かれ慣れているならいいけれど、生憎(あいにく)そんな経験、ここ数年全くない。 いくら考えてみても、蓮見に気に入られる要素が自分に見当たらない 気難しくて、年上で。 会社からは不要と打診された、落ち目のデザイナー。 化粧は薄化粧だし、トレンドを追い回しているせいで、見た目に女を意識した姿からは程遠い。 何も私でなくても、蓮見なら他にいくらでも女がいるだろうに。 わざわざこんなオバ…… ――いや、やめておこう。
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