4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ミレア様、紅茶はいかがいたしましょう」
「遠慮致しますわ」
「かしこまりました」
年老いた執事は音を立てず、私の部屋を出た。
年老いた執事―…クレンドは私が物心ついた時から一緒にいた。
私はアラン国王の娘。
つまり、姫、ということになる。
名はミレア。
この世を生きて十八年。
食料、衣服、財産。
何も不自由なく生きてきた。
だが、一つだけ足りない。
スリルだ。
父様と母様はこの城から一歩も出しちゃくれない。
私の世界はバルコニーから見える景色。
ただ、それだけ。
国民は口々に言うだろう。
『贅沢三昧もいいところだ』
『私もあんなくらしがしたいわ』
『きっと一生幸せにくらせるでしょうね』
考えるだけで怒りが込み上げる。
何が幸せだ。
軟禁状態にされた先に幸せなんて見えやしない。
怪我をするから外に出るな。
拐われるから友を作るな。
何重もの鎖は私が動くことを奪っていった。
最初のコメントを投稿しよう!