第1話

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「……はぁ…」 いい加減ここまでくると頭にくる。 そこまで娘を監禁して何が楽しい。 そういえば。 幼いころに質問した。 『なんでこんなにるーるがおおいの?』 こう返ってきた。 『あなたが輝かしい未来を迎えるためよ』 …ふん。 「馬鹿馬鹿しい」 ポツリと呟いた。 輝かしい未来? それはあなた達の輝かしい未来だろう。 もし私のためにと思ったのならこう言おう。 可哀想に。 「そうは思いませんか、キリト様」 振り向きながら説いた。 月明かりを遮る影の主に。 昨日と同様、いい風が吹いている。 「お前も苦労してんなァ」 私を嘲笑うようにくつくつと笑った。 振り返れば切れ長の紅の目がすぐそこに。 私はよく人の目を見る。 何故ならそこが一番性格を写し出すのだ。 宝石に例えるなら… いや、無理だ。 複雑に混じりあった光が人間ではないことを証明している。 それに、彼の瞳はそれ以上に、 「綺麗…」 思わず口に出てしまった。 見上げた彼の顔。 とても、とても、 辛そうで、哀しそうで、そして怒りに満ちていた。 「…もう行く」 「!!……ごめんなさい」 「お前のせいじゃねぇ」 キリト様はポン、と頭を撫でた。 その動作は酷く優しかった。 「………また明日も…」 立ち去ろうとしていた彼に尋ねたが、最後まで言えなかった。 なんだか、自分の質問があまりにも愚か過ぎて。 それでも。 「仕方ない、来てやろう」 そう言い残し闇へと消えた。 胸の高鳴りが止まない。 明日、また会える。 その時、初めて"未来"のために生きようと思い始めた。
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