第2話

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キリト様と出会って一週間となった。 キリト様はバルコニーで待っていると、静かに舞い降りてくる。 いつも気付かないので少し悔しい。 今日こそ気付いてみせる。 だが。 「…?」 時間に厳しいという彼は決まって10時にここにきた。 来ない。 じっとしていられなくなり、部屋の中を歩き回る。 何かあったのだろうか。 悪い予感がよぎる。 他の人間に吸血鬼だということがバレる、という最悪のことなんか、起こるわけない。 起こるわけ… 「…どうしたのかしら、私」 そもそも必ず会うという約束はしていない。 私が一方的にお願いをしていただけだ。 来なくても可笑しくない。 だからこんなに焦ることないのだ。 そう、自分に刷り込ませる。 キリト様は気まぐれだから、気分に乗らなかったんだ。 きっとそうに決まってる。 それからしばらくキリト様と会うことがなかった。
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