たった1度の I LOVE YOU

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「母さん、お誕生日おめでとう」 命日よりも誕生日を覚えていて欲しい。 そう言った妻の言葉が忘れられない。 ゆっくり手をあわせて昨夜の報告もしてやる。 おいって言って娘に怒られたこと。 プロポーズしてなかったと気がついたこと。 次の春に孫が1人増えること。 「お父さん、先に車に戻ってるね」 あまりにも長く手をあわせている私に気を使って、息子達は車に戻っていった。 「ブランコ、買い忘れていたな。でも、庭の掃除はしたんだぞ」 言ったところで褒めてもらえるわけでも、相槌があるわけでも無いのだけど。 「少しは自分で出来るようにならないとな」 娘が嫁ぐまでには自立していなくては。 ふんわりと頬を掠めた風が、なぜだか返事をしてくれたような感覚。 きっと、今ここで話を聞いているのだろう。 「それから、今まで言ったことなかったけど、1回しか言わないからよく聞いておけよ。ずっとありがとう、次はちゃんとプロポーズするからな。……愛してるよ」 fin.
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