第1話

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「それ、好きだったよなカズ?」 「そうだったかな……?」 「中学の時、いつも学校の帰りに買ってただろ?美味い美味いって言いながらさ」 「……確かに。いつも飲んでたね」 このオレンジジュースは、とても美味しかった。 しかし、今は味が落ちているような気がする。 飲み口に付いている液体が、少し黒ずんで見えた。 「友達……できそうか?」 新一の声を聞き顔を上げた僕は、新一を見る。 机に腰掛けた新一は、両手の中で缶を回しながら僕を見ている。 友人達といる時のような瞳ではなく、穏やかで優しそうな瞳だった。 僕は、橙色の液体を飲むフリをして目をそらす。 「……わかんないよ、そんなの」
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