第1話

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新一と同じように両手で缶を持ち、しかし俯いて僕は、言った。 エアコンの風向きが変わり、俯いていた僕の背中に冷風が当たる。 「何をやろうにも怖くて出来ないんだ。怖い怖いって言ってるだけで、本当は怖くないのかもしれないのに。分かってはいるんだよ。このままじゃいけないって。変わらなきゃって。でも僕は……何をしようともしない。いつもいつも、否定するだけだ」 エアコンの風が、容赦なく僕に降り注ぐ。 缶を持つ両手が痛い。 冷たすぎて痛い。 僕は、両手で握っていた缶を机の上に置いた。 「……ならカズ」 新一は、そこで間を置いた。 ……違う。 間じゃない。 ジュースを飲んでいるんだ。 全てを飲み込んだ新一は、立ち上がりこう言った。 「今から遊びに行こう!!」 エアコンの風が、少し弱くなっているような気がした。
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