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「新一は怖くないよ。一緒にいて楽しいし、面白い。僕は、今日いっぱい笑えた。久しぶりに笑った。ずっと、ずっと、気持ち悪かった。学校にいる自分が、本当の自分じゃないように思えて、だけどその感覚にずっとひきずられたままだった。抗おうにもそれが自分の一部で自分自身なんだって思えて、何もしなかった。今日はその感覚がなかった。気持ちよかったよ」
揺れるブランコやシーソー、鉄棒にすべり台。名前の知らない遊具達。
そして、何よりも右手に握るオレンジジュース。
全てを懐かしく感じる。
一口飲んだオレンジジュースの味が、ゆっくりジワジワと染み渡る。
中学生の頃、ここで缶蹴りをしていたことを思い出した。
僕は、中に入った液体を全て飲み干して立ち上がる。
「話そうカズ。明日、学校で俺と話そう。休み時間に」
僕は、新一の顔を見た。
何を言ってるんだと思いながら。
「ぼ、僕に喋れっていうの?皆の前で?そんなの無理だよ」
「分かってる。だけど、それじゃいけないんだ」
新一は、ゆっくりと立ち上がり、僕を見て言った。
「だから、少しずつ、ゆっくり。俺達なりのスピードで話して、いつか笑おう」
何故だろうか。
新一の言ってることは、一方的で、僕の気持ちなんて考えてないのにーー
「いきなり変わるのは無理さ。だから、少しずつ変わろう」
ストンッ、と胸のうちに落ちてきた。
「……努力…するよ」
「そうか」
新一の声と少しの間の後に新一は、右手に持っているオレンジジュースを飲み干した。
そして、地面に置いた。
そしてーー
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