君、あたし

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なんで。 どうして。 「……………高橋くん」 君が。 ………この教室にいるの。 別に彼はこの教室のクラスメイトだし、おかしくはない。 でも、退院したという知らせは聞いていない。 最初は怖かった。でも、それから放課後の教室で彼と挨拶を交わしていたら、このままでもいい気がした。 彼が、前と変わらぬ笑顔で。 変わらぬ声で。 変わらぬ呼び方で。 ───あたしの名前を呼ばれるのが、心地良かった。 でもどうしても怖くなってきた。 …彼は本物じゃない。 これは彼じゃない。 本物じゃない。 居ない筈の彼と放課後の教室で会って、5日目。 彼にようやく、触れられた。
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