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「……あ、れ?」
テニス部の部室。
体操着に着替えた後、あたしは通学用リュックサックを覗きこんで、少し間抜けな声を出した。
「どうしたー?瑞穂」
「んー…。教室にあたしの部費、忘れたっぽい」
「え、まじで。誰かに盗まれる前に、行ってきなー」
ほらほら、と同じ部の彼女は部室のドアをラケットで指して、早く行くように催促する。
「急いで行ってくるから」と一言告げ、教室へと走った。
ああもう、早く顧問に渡しときゃ良かったと、全力疾走しながら軽く後悔していた。
階段を二段、三段飛ばして上がる。
(………スカートじゃなくて、良かったー…。)
校舎に文化部の友達が居て、一言挨拶しながら行く。制服でこの走り方だったら間違いなくスカートは捲れていただろうから。
上は長袖のジャージ、下は膝上の短パンという、実に走りやすい格好だ。
…………って、こんなこと考えている場合じゃない。
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