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「…………まさか、」
「え?」
「まさか…また君が、僕の挨拶に応えてくれるとは、思ってもみなかったよ。」
今度は嬉しそうに、でも哀しそうに笑う。
彼の“こういう所”が、なんとなくお爺ちゃんみたいだな…と、私は思う。とても同い年と思えない。
というか、私も吃驚した。まさか、5日も彼に会えて、少しだけでも話せるとは。
そして、彼は言う。
「瑞穂さん。─────またね」
私は、言葉を失った。
まだ、質問できていない。
答えてもらっていない。
「待って…。高橋くん」
「なに、瑞穂さん」
「“またね”って…いつ?」
私は問い詰めようとしていた。
「いつになったら…会えるの?5日前から、ずっと言っているのに…まだ会えてない」
「瑞穂さん」
「私、本当の高橋くんと話せてないよ!」
「瑞穂さん」
最後の“瑞穂さん”を聞いて、我に返った。
気付くと手汗をかいていて、部費を入れている袋をぐしゃりと握り潰していた。
「………あと少し」
少し、なだめるような口調で。
「あと少しで、会えるよ」
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