3人が本棚に入れています
本棚に追加
「…本当?」
「本当だよ」
彼は、一度視線を下に移した。
「嘘じゃ…ないよね」
「うん」
「また、会話が出来る?」
「……うん」
彼は、顔をゆっくり上げる。
「…だから、また会える日まで……またね」
…………それでも私は、笑って言い返す事が出来ない。…そういえば、最初に会ったときも、ちゃんと挨拶出来なかった。
確か、そのとき、たまたま機嫌が悪かったんだよなあ…。でも彼はちゃんと挨拶してくれた。
私に話し掛けてくれた。
いつから、こんなに他人行儀になったのだろう。
あたしだけ。
「瑞穂さん」
「…………なんですか」
あー…。もう、本当こんな…。彼のあたしを呼ぶ声で泣くなんて、ガラじゃないのに。
あたしはジャージで涙を拭った。でも、まだ顔はジャージから外さない。
すると彼は困ったように、笑う。
「瑞穂さん」
「………………なんですか」
彼の言葉に応えたとき、彼の匂いがあたしを包んだ。というか、抱き締められた。
あたしが「え、なんで?」と思ったとき、彼はあたしを離して、顔が見えるようにあたしの顔を覆う腕を優しく下ろした。
「瑞穂さん、ごめんね。僕、嘘吐いた」
「……え」
「もしかしたらもう二度と、瑞穂さんと会話が出来なくなるかもしれない。」
最初のコメントを投稿しよう!