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彼はふっと息を吐いて、笑った。あたしは、口角だけを上げる。
「それにあたし達、そんな事するような仲じゃないでしょーが」
「あー…まあ、ね。“きょうだい”だったしね」
「うん“元”、ね」
「ちょっと、ふざけただけだったんだけどねー」
「でしょうね。」
………消えちゃうのかな。
高橋くん。
…また…、何処かに行ってしまうのかな。
「そういえば、瑞穂さん。」
「なに」
「テニス部…行かなくていいんですか」
「………いや、良くないですね。取り敢えず、この床に落ちている部費を拾ってから部活に行きます。」
気付くと、テニスコートから一年の「ファイト」という掛け声と、パコンというラケットにボールを当てる音が聴こえていた。
手を離し、足元に落ちている部費を拾う。
顔を上げると、そこにはもう彼はいなかった。
………一言も言わずに。
なんとなく。
勘で。
彼は。
…あたしに、会いたかったんだろうね。
「…ばーか」
放課後、夕暮れに包まれた教室。
そこで、あたしは一言言って、教室から飛び出すように走った。
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