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その間にも大群は、フィンをその脚で切り裂こうと迫ってくる。
炎の一撃を浴びた〈メタルインセクト〉の瞳が、その炎よりも激しい攻撃色に染まっていたのに、流石にたじろぐ。
「気持ちわるいなぁ。〈魔法陣ーリングー〉」
ギチギチと耳障りな鳴き声と、赤い眼球がひしめくおぞましい光景に眉をひそめて、フィンは新しく魔法陣を展開させた。
「〈操風ーハウィンー〉!」
赤に変わり、白く強い光が魔法陣からほとばしった途端、吹き荒れた風が〈メタルインセクト〉たちを巻き起こした。
ただの突風ではない。縦横無尽に吹く風は、まるでフィンのワンドに指揮されるように駆け巡り、地を這う〈メタルインセクト〉を剥がしては弾いていく。
そしてその風に操られるように、飛んでいる別の一匹とぶつかり合えば、刃物のような鋭い脚で、甲殻に守られていない腹を互いに切り裂いた。
『ギィイイッ!!』
耳を塞ぎたくなる鳴き声と、体液が噴き出す音を混ぜて、ボトボトと肉片が地面に落ちていく。
表情を引きつらせたミリが木の影から顔を出し。
同じく、無惨な光景を目にしたフィンは、何かを得たように満足げに頷いた。
「ふうん。やっぱり、中身は脆いんだ」
攻撃を変えたのは正解だった。
強制的な同士討ちにより、瞬く間に〈メタルインセクト〉の大群は細切れにされていく。
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