【chapter1.迷ヒ森】

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   その間にも大群は、フィンをその脚で切り裂こうと迫ってくる。  炎の一撃を浴びた〈メタルインセクト〉の瞳が、その炎よりも激しい攻撃色に染まっていたのに、流石にたじろぐ。 「気持ちわるいなぁ。〈魔法陣ーリングー〉」  ギチギチと耳障りな鳴き声と、赤い眼球がひしめくおぞましい光景に眉をひそめて、フィンは新しく魔法陣を展開させた。 「〈操風ーハウィンー〉!」  赤に変わり、白く強い光が魔法陣からほとばしった途端、吹き荒れた風が〈メタルインセクト〉たちを巻き起こした。  ただの突風ではない。縦横無尽に吹く風は、まるでフィンのワンドに指揮されるように駆け巡り、地を這う〈メタルインセクト〉を剥がしては弾いていく。  そしてその風に操られるように、飛んでいる別の一匹とぶつかり合えば、刃物のような鋭い脚で、甲殻に守られていない腹を互いに切り裂いた。 『ギィイイッ!!』  耳を塞ぎたくなる鳴き声と、体液が噴き出す音を混ぜて、ボトボトと肉片が地面に落ちていく。  表情を引きつらせたミリが木の影から顔を出し。  同じく、無惨な光景を目にしたフィンは、何かを得たように満足げに頷いた。 「ふうん。やっぱり、中身は脆いんだ」  攻撃を変えたのは正解だった。  強制的な同士討ちにより、瞬く間に〈メタルインセクト〉の大群は細切れにされていく。
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