【chapter1.迷ヒ森】

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  「〈操風ーハウィンー〉――――っ!?」  そして、とどめとばかりにもう一度ワンドを振り上げた――その瞬間だった。  突然、ワンドが強い力で引っ張られた。  風の中でもがいていた〈メタルインセクト〉の甲殻の下から長い触手が鞭のように伸びて、フィンのワンドに絡みついたのだ。  引っ張られ、フィンも風の勢いに巻き込まれていく。 「こ、の……っ!」  腕に力を込めて抗い、被ったフードを逆の手で押さえつけて、魔法陣に込める魔力ーマナーの操作に集中する。 「やぁああ!」  直後、風の向きが大きく変わり、〈メタルインセクト〉が逆方向へと飛ばされた。  フィンはワンドを旋回させると、風の方向に〈メタルインセクト〉をぶん投げた。  ・・・・・・・ 「に゙ゃあああっ!?」  ワンドに絡まった触手が引きちぎれ、〈メタルインセクト〉がフィンの視界から消えた途端に、背後からはまたもやミリの悲鳴。  普段の彼女からは想像も出来ないほどの雄叫びに振り返って見れば、そこには可憐な獣人のクリーチャーが、先ほどフィンが投げた〈メタルインセクト〉に押し倒されて、地面の上でもがいていた。 「いやぁ! いにゃ! うひぃああっ」 「ミリ、大丈夫」  近づき、その体に乗った虫のクリーチャーを剥がしてあげて、ぞんざいに投げ捨てる。
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