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けれどフィンは黙ったまま地図を眺め続ける。
ツ……っと、指で地図の線を撫でた。
国の名前、その中にある街や都市に遺跡の記。国境を何本か超えて、川や湖のそばを細い指が通る。
今までの旅の道筋を再現するようになぞれば――ピタリと途中で止まった。
それは、そこがいま自分たちがいる場所であることを示していた。
細い道の線の途中だが、不思議な事に、そこに森など描かれてはいない。
真新しい地図は、測量士によって書き直された最近のものだ。
「森が急にできた……? 変なの」
首を傾げて呟き、パタンと地図を小さく折りたたんで、バッグの中へと詰め込んだ。
「で、どうしょうか」
ワンドを抱え直しながら、フィンが呑気なことを言う。
ミリは空中に寝そべったまま肘をつき、呆れたように溜め息をついた。
「魔法使いなんですから、それくらい自分でなんとかして下さいな。ワンドは道探しの杖じゃないんですよ」
「でも、それこそ魔法っぽいよね。――誰かに訊いてみる?」
「誰が答えてくれると思います?」
ミリが片目でチラリとフィンを見ると、琥珀色の瞳が、のんびりと森の奥を映していた。
「でも、誰かいる気がするよ」
フードを深く被り直して、フィンはさらに森の奥へと進んで行った。
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