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◇◆◇
それから、どれくらい歩いただろうか。
同じ獣道に、同じ森の景色ばかり続くので、進んでいるのかわからない。
確か森に入ったときは、太陽はまだ真上まで昇っていなかったけど、こうも薄暗いと時間の感覚さえも狂ってくる。
けれど、歩き続けた身体は、間違いなく疲労し始めていた。
「少し休まないですか? ご主人様。そろそら疲れません?」
「ミリは浮いて飛んでるだけのくせに」
フィンが提案を飲まずに言えば、ミリは偉そうに胸を張る。
「これも案外、魔力-マナ-を消費して疲れるんです。それにアタシは、ご主人様のことを思って言っているんですよ」
「いいよ。ミリに心配されると、何か気持ち悪い」
「んまっ。可愛げのない」
ぷいっと、フィンは顔を背けた。
フードから秘色色の前髪がこぼれて、表情を隠してしまう。
やれやれとミリが肩をすくめた。
「頑固というか、真面目というか。そのくせ、どこか抜けているんですよね」
ミリは思い返しながら言う。
「街に入れば財布を落とすわ。川辺を歩けば自分が落っこちるわ。ワンドを振れば頭を打ち、小さい森でも迷うし、歩けば足の小指をぶつける。馬鹿でドジだけど、そこはちょっと可愛いですかね」
「褒めてない、褒めてないから」
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