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〈メタルインセクト〉の一匹が、フィンの腕にしがみつく。
その脚は体を覆う甲殻と同じで鉄のように固く、鋭く刃物のように狙ったものを切り裂く。
故に武器の材料にもなる〈メタルインセクト〉の特性を詳知していたフィンは、コートごと肌を裂かれる前に腕を大きくあげて一匹を振り落とした。
「くっ」
しかし大群は途切れることなく群がって来る。フィンは飛び退いて、振りかぶった勢いのまま、さらにワンドで空を叩いた。
「〈火球ーファイアボールー〉」
呟くように唱えられた呪文ースペルーが、瞬時に展開された魔法陣に刻まれる。
同時に炎が収束し、いくつもの火球となって、地を這う〈メタルインセクト〉の大群へと降り注いだ。
しかし、その炎の塊は、鉄のような甲殻によって弾かれてしまう。
「アチッ、アチチ!」
弾かれ、飛び散った火片が当たったりでもしたのか、木の影からミリの悲鳴が聞こえてきた。身を振って炎を払おうとする彼女の姿を、フィンは横目で見て、ぽつりと言う。
「森とミリは燃やせても、虫は燃やせないか……」
「アタシは燃やさないで下さい!」
「ワザとじゃないよ」
叱られたせいと、それからどうしたものかと小さく息をついた。
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