2人が本棚に入れています
本棚に追加
僕と美咲は同じ会社の中で働いている。
オフィス内ですれ違う度、二人しか分からないサインを交わし、それでお互い無言で通り過ぎても意図することは伝わるほど仲が良い。
「おっ、ちょっと太ったんじゃない?」
「ひっどーい!そんなことないですっ」
上司にからかわれながら給湯室に入っていく美咲を横目で追いながら、今日の夜は美咲の部屋に行くことになった。
―付き合い始めてもう二度目の春を迎える。―
よく口ゲンカはするが、幾度も危うい危機を何とか乗り越えてきた小さな自信が二人にはあった。
「ねぇ、何時くらいになりそう?」
給湯室から出てきた美咲は、二回くらい折り曲げた薄緑色した小さな紙を僕のデスクに置いていった。
それをスーツの左ポケットにしまい、給湯室奥にあるトイレでそれを開いた。
携帯を開き、美咲のアドレスに「多分、今日は残業無さそうだからいつもぐらいじゃないかな?」と乗せる。
すぐさま携帯のバイブが僕の左ポケットを揺らす。
↓続く
最初のコメントを投稿しよう!