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「あっ、いいです、いいです。今お仕事中ですもんね…、また時間ある時にお返事くださぁい」
なぜか優季さんと面と向かって話しているかのような、そんな気分になっていた。
「おっ、どーした若者!!」
僕の後頭部にボールペンを突き付け、背後から全然似てない某俳優の真似をする美咲。
「仕事中なのに携帯の画面凝視しちゃってさ、あたしのメール何度見してんのよ!」
「美咲…」
「何よそれ、あたしの話したことへの回答になってなくない? 」
僕は美咲のその無邪気な表情を見つめてしまう。
「な、なによ…」
左手で静かに携帯を折りたたみ、スーツのポケットに滑り込まそうとした時、美咲はその動く左手を一瞬目で追ったのを止めた。
「ひーくん、あたしに何か隠してる?」
「ううん、そんなんじゃないし…」
「じゃ、なんであたしの顔少し見たのよ! 」
美咲は話す時に人の顔を見て話さない僕の、いつもと違う変化に気付く。
「まぁ~いいですけどぉ~、ひーくんがそうならあたしにだって秘密のひとつやふたつ、う~ん、四つや九つ…たくさんあるかもよ」
「美咲…」
↓続く
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