―奮起―

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何やかんや言いながら住宅街を 抜けて最寄りの駅へ向かう。 通勤ラッシュを避ける為に私達 は一本早い電車に乗っている。 これに乗り遅れるともう大変だ。 満員電車でもみくちゃにされ、窓 に押し付けられたりして、降りる 頃には身も心もボロボロなのだ。 二度とあんな地獄は、味わいたく ないと、悠々座りながら思う。 結構、早い時間なので人が疎らだ この車両には、あまり人が居ない 朝練なのか居眠りしている学生、 新聞を読んでいるサラリーマン。 思い思いに時間を過ごしている。 コツリ…気に入りの男性バンド の曲を聞いていたら、肩に烝の頭 が乗っかってきた。 読みかけの小説が、膝上に乗って いる。…どうやらこの暖かな春の 日差しと心地よく揺れる車体に、 眠気に負けてしまったのだろう。 烝が人前で眠るなんて珍しい…。 短く色素の薄い猫毛が頬を擽る。 それにしても睫毛が長いなぁー こいつは黙っていれば美男子だ。 くっきりの二重瞼に、肌も白くて 綺麗だ。鼻筋もすっきり通ってて 血色のいい唇も形がいい。 モテない筈がないよ、私が烝なら ハーレム大国を築くよ!? なのに烝といったら、女嫌いだか なんだか知らんけど、かわいい子 から告白されても断る一方… 私が知る中では、彼女がいた事は ないよなぁ…幼なじみとしては、 将来が不安になってくるよ。 私も彼氏が居たことないからね、 人の事、言えた義理じゃないけど 腐っても幼なじみだから、烝には 幸せになって欲しいなとは思う。
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