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あ、でも烝が女の子と楽しそうに
歩いてるのを想像したら、それは
それでちょっとだけ寂しいかも。
何て苦笑いしながら、瞼にかかる
髪を払ってやると、パチリとそれ
が上がって、三日月に細められる
烝「…そんなに見つめられると、
照れるんだけど~」
…肩口から上目遣いでこちらを
見上げてくる瑠璃色の綺麗な瞳
に少しどぎまぎしてしまった。
椿「な゙…お、起きてたのっ!?」
烝「ん~さっきからね、俺の顔に
何かついてた~?」
いいえ…と、熱を帯びる顔を逸ら
せば悪戯に微笑んだ烝が、ね~と
顔を覗き込んでくる。
椿「ち、近いよ…ちょっ烝ってば」
肩を押してもビクともしない…。
烝「なに照れてんの、可愛いね~」
椿「違うから、離れ…」
烝「ねえ、椿は…」
烝がなにか、真剣な顔で言おうと
していたが…
椿「離れろ言うてるやろーッ!!!」
余りの羞恥心に、頭突きをかまし
馬鹿野郎ーと、捨て台詞を残して
丁度開いた扉から飛び出した。
周りからは、喧嘩でもしたのかと
いう視線を集めながら、残された
烝は額を押さえ、うつ向いていた
烝「あだだだ…もう椿ったらいつ
になったら気づいてくれんの?」
こんなにも分かり易い愛情表現。
未だに己の気持ちに気づかない
鈍感な幼なじみを追いかける為、
烝は赤い額を携えて鞄を掴んだ。
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