第3章

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「ただいま…」 リビングをすり抜け自分の部屋に行こうとすると、お母さんが廊下に飛び出してきた 「莉子!」 「………なぁに?」 「今日………大丈夫だった?」 窺うような表情 「うん」 精一杯の笑顔を浮かべて部屋に入る 笑顔…? 笑おうと思ってるだけで、きっと笑顔なんかじゃない ベッドのすぐ横にある姿見に自分を映し、鏡の中の顔をなぞった 血の気のない、死人のような表情 笑うって、何? 笑うことに意味はあるの? 私は、何のために生きてるの―――? 鏡の中の私の目から、次々涙がこぼれ落ちる そのままベッドの前に跪(ひざまず)き、顔を布団に埋めて泣いた 涙は―――枯れることを知らない
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