第1章

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キキィィィィ―――――ッ 耳障りな音が、すぐ傍で聞こえる だけど、頭に響くほどのブレーキ音も、今の私にはフィルターがかかったようにボヤけていた いきなり左腕を掴まれ、後方に引っ張られる 「あ」 言葉に出来たのはそれだけ 私は勢いよく後ろに倒れた でも、どこにも衝撃は無い むしろ、何かに優しく受け止められた感じだ バタンという音がして、運転席から年配のおじいさんが転がり出てくる 「だっ、大丈夫かい?!」 その言葉が私に向けられたものだと気付くまで、しばらく時間が掛かった 「急に飛び出しちゃダメだろ!えっ…と、警察に電―――」 「大丈夫です」 「え?」 「大丈夫だから…連絡しないで下さい。それに―――」 笑顔を作ろうと思っているのに、頬が引きつる 笑顔って、どうやって作るんだっけ…?
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