第3章

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※※※ 授業が終わり、教室から校庭を覗く ―――居た 『莉子ちゃん!俺…明日も、ここで待ってるから!』 昨日の山神さんの言葉が、頭の中で繰り返される 何で? 1人考えてみても、答えなんて出てこない 私のことなんて、ほっといてくれたらいいのに――― 真由美の誘いも断り、用事もないのに教室で時間を潰すことにした ジッとしてるとあの時の光景が目の前に現れるので、思い出さないよう出された化学の宿題を広げる 教室に暗がりが広がってきた頃、日が傾いてきたことにようやく気付いた 「―――っ。い…やっ」 赤い夕焼けが薄暗い教室の中に差し込み、小さく悲鳴を上げる ―――怖い 机の上に広げていた教科書や筆記用具を、そのままの状態で急いで鞄に突っ込む 指先が震え、消しゴムが転がり落ちた 拾い上げるためにしゃがみ込もうとして、足が竦(すく)む 「―――っ、い…」 赤く染まった床を見て、頭で理解するよりも先に体が跳ねた 机の上の鞄を掴んで両手でギュッと抱き締め、慌てて教室を飛び出す ヤダ 助けて―――広哉 涙が頬を伝った
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